ただいま思案中。

ハンドメイド作家がネットをさまよっています。

根付と飾り結び 久しぶりに自分のためだけに手芸をして楽しかった話

 

 

気分転換をするハンドメイド作家です。皆さんコンニチワ

いつもと全く違うジャンルの手芸をするのは楽しい。
しかも自分のための手作りはとっても楽しかったので、今日はその話をしようと思うの。久々に真面目に書いたのでお暇な方はお付き合いくださいませ。

先月、骨董市に行ったのが話の始まり。
場所は、ちょっと用事があって立ち寄った商業施設の片隅でやっていた「大骨董市」会場。私は通り過ぎようとしたんだけど、夫が「寄ってく?」と誘ってくれたので覗いてみたのね。

見れば欲しくなるよね (/ω\)ごぼっ

いろいろ見るうちに手ごろな値段でとてもいい中国茶器を見つけたのね。
夫は「買ってもいいよ」って言ってくれたのだけど、なぜか他のお店で売っていた細やかな細工の根付に魅かれて中国茶器ではなくて柘植の根付を買ってしまった。

これがその根付。

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似たような中国製の根付ならアマゾンでポチってすぐ買えるけど、この根付はニスは塗ってなくて、なめらかな手触りが良い。猿の表情が可愛いね。彫刻も細かいのよ。
「良い根付だな~」と思っていたら、オヤジさんが「あんた、意外に目がいいな。それ30年前のヤツだよ、こういうのはもう日本では出てこないぜ」と話しかけてきた。

オヤジ
私に見る目があれば今頃こんな生活してない (/ω\)ごぼっ

正直いえば私にとってこの根付が30年前の物でも1年前の物でもどうでも良く、今後同じ根付が日本に出てこようが出てこなかろうがどっちでもいい。とにかく私はこの根付が気に入った。根付には作家の名前(日本名)が彫ってあって、どうも日本の職人さんが作った根付のよう。

猿は桃の上に乗っているのね。猿のしっぽ、桃の葉が桃の枝につながる部分は糸のような細さ。細工の細かさとサルと桃の組み合わせに思わずニンマリした。

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今回買わなかったけど犬や虎の根付もあったので、この根付は干支で揃ってたんだと思う。オヤジさんもそう言ってた。
でもって、動物が桃の上に乗っているのがポイントね。モモは不老長寿の果実の象徴なので、縁起も担いでいるのよね。

で、猿が桃の上に乗っているなら、その猿は言わずと知れた孫悟空よね。
西王母の庭の「不老長寿の桃」を勝手に全部食べてしまったのが孫悟空

この根付、猿と桃で「西遊記」を思い浮かべることができる人はなかなか洒脱よね。
おそらくそういったことも職人さんは思い浮かべながら作っていたはずで、いちいち「孫悟空ですよ」と売り手が言わなくても買い手は根付に隠された故事や逸話にニヤリとする。職人はそういった教養を買い手に求めているワケね。

そういう洒脱な世界が根付にはあると思う。

ちなみに酉の根付についていえば、猿酉戌と桃の組み合わせなら桃太郎。桃太郎にでてくる猿酉戌は方角で中国でいうところの…という話は長くなるから割愛。

 

 

根付を買った後は作る愉しみがあるの!

根付を買った後の愉しみとしては、根付をつけるヒモを編むこと。
アジアンコードを買って、凝ったヒモ飾りを作るのですね。
久々に自分のために手作りするのってワクワクする。手作りって面白いなぁって思う。

まだ製作途中なのだけど、唐蝶結び。

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手持ちの陶製のビーズをつけて、一番上に通した根付はウサギ。実は猿と鶏と一緒にウサギさんも買いました。
※一般的に自分の生まれ年の干支を持つことが多いと思うけど、実は裏干支といって、自分の干支の裏にあたる干支を持つのも縁起がいいと言われています。要は「好きなヤツ持てや」ってことだと思うー。

日本の骨董のお皿にもウサギ柄は多いですよね。

皆さんはウサギといえば何を思いますか?
日本ではウサギは月で餅をつきますよね。

中国ではウサギは月で「不老長寿の薬」を作っています。この「不老長寿の薬」を月で作るようにウサギに指示したのが西王母。中国では西王母が「不老長寿」の鍵を握っているのですね。
日本で「不老長寿」の薬を手に入れたがった主人公の物語といえば「かぐや姫」があまりにも有名。
実はかぐや姫が帰る場所も月でしたね。
かぐや姫は天女の迎えで月に帰りましたけど、地域によっては古い話で「ウサギが迎えに来た」となっているものもあります。

ここんとこ面白いでしょう?

つまりね、月とウサギの組み合わせは不老長寿を象徴するワケです。月とウサギは常にセット。今回根付の飾り紐に私はウサギの下に陶製のビーズを配置しましたけど、実は月に見立てているわけです。

月、ウサギに比べてあまりに小さすぎるけどさ。

小さな根付から連想される物語は尽きることなく続きます。
根付は持つ人に教養を要求し、逸話を楽しむことを強要する。

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しっぽの近くに「くずし字」っぽく職人さんの名前が彫ってある。
私は学生の頃くずし字が苦手で単位を落とし学芸員の資格がとれなかった。
結婚してからもう一度勉強して、今、くずし字に飽きて放り出している。

ミミズや (/ω\)あんなん字やない(涙)

 

唐蝶結びの話に戻ります。

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こういう、ヒモを装飾的に編む文化は東洋独特の文化。
日本のあわじ結びも中国の吉祥結びもおめでたい意味合いが込められていて美しいと思う。
唐蝶結びは玉房結びという飾り結びの変化形。非常に美しいけれど、そのぶん難しいのが特徴。飾り結びを作り慣れていない人にはまず作れない。

自分で作ったように書いてるけどお前本当は作れないんだろう、とか言われると悔しいから証拠画像ダ!

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スポンジを使って作る私。
( ゚Д゚) 今、お前、笑ったな、笑っただろう

私の持っている飾り結びのテキストは専用のコルクボードで編むようになっているけれど、大きくない作品ならキッチンで使うスポンジで十分。スポンジも未使用ならハリがあって使いやすい。お金かけて道具から揃え始めたらいくらあっても足りないし、いつまでたっても作れない。頭を使えばいいと思う。

飾り結びを始めるなら専用のアジアンコードで作るのがお薦め。

 

ハリがあって仕上がりも美しく、なにより複雑な飾り結びも作り易い。私は太さが1ミリのアジアンコードを使っています。

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画像は紺と黄色と朱色です。作ってみればわかるんだけど、せっかく作るなら鮮やかな色彩を使ったほうが見栄えが良い。

ヒモがぐしゃぐしゃなのはネコのせい。何度写真を撮っても邪魔しにくる。
ほらね。

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久々に、本当に久々に自分のためだけに手芸をして楽しかった。

根付買って、細かい細工を楽しんで、根付につける飾り結びを作って楽しんで、物語を連想して楽しんで、手元で愛でて楽しんで。
何度でも楽しめる、とても良い買い物をしました。

もし茶器を買ってブログに書いたとしても「こんなん買いましたー!」みたいな所有欲満たしただけのつまらない自慢話になっていたと思う。

私の使っているテキストはこちら。

アジアンノットを楽しむ―オリエンタルなアクセサリーと暮らしの小物

アジアンノットを楽しむ―オリエンタルなアクセサリーと暮らしの小物

 

 

若い頃に買った本だから少し古いけど、飾り結びは今も昔も編み方が変わるわけじゃなし。ヒモ結びを思い出すたびに本棚から引っ張り出して参考にしています。 飾り結びは一旦はじめるとハマるので長時間結び続けて目を悪くしないように気を付けてください。

 

最後に

ハンドメイド作家は簡単に「勉強します」とか「腕とセンスを磨きます」っていうけど、教養と遊び心、モノを見る目はたぶん勉強じゃ身につかない。それらを総じて「センス」と呼ぶ人もいるけれど、こういったものは有能なカリスマやコンサルだって教えられない。そして教えられて身につくものでも無い。
今まで勉強してこなかった人が、今さら思い立って勉強して身につくものって何なの?

例えば根付も飾り結びも、何も語らずともその一つ一つの中に歴史と意味があり、深い物語がある。
アナタの作品にはなにがあるのかな。

 

お客さんの前でメッキがはがれないように注意してくださいよ。

 

さようなら